水たまりに映る空もまた、揺らめくみず色のグラデーション。傘を忘れた雨上がりの放課後、鞄を抱えて跳ねた足元に、ふと光の粒が散っていく。その瞬間だけ、世界が逆さまになる魔法にかかった気がした。
プールサイドに転がるビーチボールの色も、夕焼けに溶ける前の空も、全てが淡いブルーでつながっている。蝉時雨が響く坂道で、君が振り返った時の瞳の奥にだって、小さな水色の宇宙が広がっていたっけ。
夜更けの自転車で通り過ぎた川面には、星屑を溶かした水流が銀河のように煌めく。懐中電灯の灯りが水面を揺らすたび、過去と現在の境界が曖昧になっていく。あの日々は、きっと永遠に色褪せない透明な標本のように、記憶の瓶の中で輝き続けるのだろう。
みず色は時のリズムを纏い、空と大地を往還する。儚さと確かさが織りなすこの季節の調べを、私たちはそっと胸に抱きしめて歩いていく。